「コンテナ物語」訳:村井章子(原題:The Box、原著:マルク・レビンソン)書評

日経BP社から2007年に出版された訳書
 コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった 訳:村井章子
https://www.amazon.co.jp/dp/4822245640/
コンテナ物語 TheBOX 表紙

(原題:The Box: How the Shipping Container Made the World Smaller and the World Economy Bigger 原著:Marc Levinson
 https://www.amazon.com/dp/B003U2TR5O/
をKindle版 ( https://www.amazon.co.jp/dp/B00F36MG8U/ ) で読み終わったので、簡単に感想などを。
去年12月に日経BPの本がいろいろKindle50%オフキャンペーンやってて、対象の1つだったので買うだけ買って積んであって、やっと読んだという次第。
紙の本だと448ページもあったようで、なかなかボリュームあります。

現在ではISOで40フィートサイズと20フィートサイズが規格化されている(最近は45フィートや53フィートに拡張もされているか)国際海上コンテナが、いかにしてアメリカから世界に広まり、世界の経済活動に大きな変化をもたらせたか、というコンテナ輸送の歴史を解説した本です。
日本語タイトルは「コンテナ物語」ですが、国際海上規格コンテナ以外のコンテナ、航空コンテナやローカルなコンテナ(日本の国鉄・JR貨物規格の12フィートサイズなど)についてはほとんど触れられていません。

まず全体の構成ですが、印象として大学1年生が使う教科書のような感じがしました。
目を引くための写真やイラストは一切含まれていません。
もっと平易で一般向けの本なら、コンテナの透視イラストや外見写真、コンテナ船の写真や巨大化を図示した比較イラスト、港におけるコンテナ積み替え風景写真といったものを挿入してきそうなところですが。こういったものはマジで一切ありません。
図と呼べるものは、コンテナ普及の象徴的な場所となったアメリカ・ニューヨーク港の地理を示す地図が1つだけ。
表は、数字に占める割合構成を示す表や年次ごとの数量の伸びを見せるグラフはちょいちょい入ってます。
あとはとにかく文章&文章となっています。
ここでどうしても引っかかる人もいるかとも思いますが、そうでないなら文章はなかなかこなれてて読みやすく、原書の英語もいいんでしょうし、日本語訳もいいんだろうな、両方が良文なのだろうと感じました。
コンテナ貿易の話であると同時にマルコム・マクリーンの伝記でもあるこの本、主要登場人物は魅力的に描かれていて、次の展開が気になりいったん本編を読み始めたら最後、ぐいぐい読み進めることになりました。

コンテナと呼ばれる定形の木製や金属製の箱に物品を収めて輸送しようという試みは、ずっと以前から各地で散発的に行われてきたにも関わらず。またそのコンテナを船に積むことも別に行った人物も居たりするのに。なぜ1956年のアメリカでマルコム・マクリーンの始めた事業こそが今日のコンテナ物流革命の礎となったのか、順序立てて語られています。
また21世紀のアメリカの自由的な政策や経済を見ているとにわかには信じがたいことながら、この1950年代~60年代はアメリカといえど、海運も陸運も(この本では関係ないため触れられていませんが空路も)政府の規制によって既得権益がガチガチに守られており、新たな事業を着想しても実行できないとか、無駄にコストがかかりまくる制限を加えられて新手段にメリットが生まれないといった実情も説明されており。海運分野でも当初10年ほどはコンテナが遅々として広まらなかったり、海運分野でアメリカ以外にも伝播していった時期でもアメリカ国内陸上輸送が鉄道で行われなかったり、といった様子が描かれています。
当初は様々な困難がありつつ、また世界的にコンテナ輸送の競争が始まると今度は海運業自身による市場破壊を起こしてしまって、とその結果としての世界物流革命と現在の世界経済がある、という「なるほどなー」ってなります。

海運と陸運の変化、そしてそれによって工業地帯や人口の移動が発生する、そこに地理的な要素が与える影響、といったコンテナにまつわる経済的なアレコレはアメリカで起こった変化をメインに語られていますので。細長い列島が海に囲まれていて海のそばばかり平地があり、海から離れた内陸地には広い平地があったりしない日本の住人としてはピンと来ない点もあったりしました。
アメリカの都市名もいろいろ出てきますが、アメリカの国内地理に詳しくないと分かりづらいので、GoogleマップとかwikipediaなどをPCやタブレットで開きながら読むのがいいかもしれません。
それはそれで読み手ローカルな事情なのでいいんですけど。
アメリカから波及してきて後追いでコンテナ物流に巻き込まれた形のヨーロッパについて、船と鉄道とトラックトレーラーが組み合わさったインターモーダルの普及はアメリカと異なりどう進んだのかって点はもっと詳しく欲しかったなあって思いました。規制でガチガチで非協力だったアメリカ国内と違い、ヨーロッパはむしろ早期に鉄道が協力してくれたっぽい書き方がチラリとされてるわりに、その中身が見せてもらえてないのがなんかもやもやしました。

逆に、太平洋航路のコンテナ船普及に関しては日本が結構名前があがるのは、へぇーって感じ。
またコンテナが起こした物流革命の1つの結実として、トヨタのジャスト・イン・タイム方式もあがっていました。
アメリカから見て日本あるいは日本企業はこんななのかっていうのはちょっと新鮮。

また第9章「ベトナム」においては、ベトナム戦争中にアメリカ軍と契約してアメリカ本土とベトナムの間の軍物資輸送を引き受けたマルコム・マクリーンが、これまた旧態依然で全然モノが届かないし送っても滞留しまくりで無駄になっていた軍事輸送を改革し、現代的なロジスティクスのやり方を持ち込んだ話が出てきます。
この章は紙だと26ページ分ぐらいありそう。
それ以前の民間の話の章からもたびたび出てきたことですが、この章でも「単に運びたいモノを箱状のコンテナに入れれば効率が良くなる……なーーんてわけではまったくない」ことがひしひしと伝わってきます。朝鮮戦争時点からアメリカ軍はCONEXと呼ばれる独自コンテナを既に導入していたのですが、それでは全然ダメだったと。
この章、軍事的にもなかなかに興味深いものでした。

そういうわけで、ミリタリにも少し噛んでもいるし、船の話は興味惹かれるしで、地味な話ではあるかもしれないけどおもしろい、コンテナ物流の本でした。
日本語で読める、アメリカと世界のコンテナ物流解説書としては、今あるものではこれが決定版かなあって思います。
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イカロスMOOK「トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD11&L-1011」書評

IL-2 1946向けのMODで空中給油機KC-10を仕上げる前段階として、正しい実機情報を入手しないとなので、本を探しまして。
KC-10そのものズバリなものはニッチな機体だけになかなかないのですが、ベースとなった民間旅客機・貨物機のマクダネル・ダグラスDC-10の本を買って読めば、空中給油機や軍用として改設計された点以外の共通部分について学べるだろうということで、日本語のものとして1冊これを、他に英語のものをAeroFaxのとAirlife's Airlinersなものと、合計3冊調達しました。

とりあえず、「トライ・ワイドボディ・ジェット DC-10/MD11&L-1011」読み終わりましたので、いつものように簡単に。
イカロス・トライワイドボディジェット表紙

タイトルのとおり、DC-10のみのムックではなく、後継ハイテク機のMD-11と、ロッキード製のライバル機・トライスターことL-1011と、ワイドボディの三発機3機種まとめて1冊の本になっています。
ページ数は表紙含んで182ページ。
中身の比率はカラーが90ページ、モノクロが88ページかな。カラーの比率高いなという印象。
3機種それぞれに割いたページ数の割合としては、4:2:4ぐらいですかねえ。どうしてもMD-11は少なめ。
期待していなかったことですが、米空軍KC-10、オランダ空軍KDC-10、英空軍の軍用トライスター(空中給油機能ありのものナシのもの)などについても、わずかずつとはいえ触れられており、ほほぉなるほどと。サイズは小さいがKC-10はカラー写真が3枚、登場時のハイビジで大統領専用機などと共通するホワイト地に青のラインが入っていたりする時代、その次の上オリーブドラブで下面ライトグレーのツートン時代、現在の全体艶なしグレーと網羅されていたりしました。

余談ながら。
英空軍は空中給油機と人員・貨物輸送機のベースとして旅客機として使用されていた中古L-1011の500型(短胴長距離型)を購入したそうです。最初に自国のBAから6機買って、改造して使用し、あとでアメリカのパン・アメリカンから3機追加で買ったら仕様が結構異なっていて元BA機と同じようには改造できなかったので、給油機化も貨物機化も行わずに旅客機仕様を活かした人員輸送専用になったとか。
同じ機種の同じサブタイプでも、そこまで仕様が違うことあるんだ、って、フフッてなりました。読んでておもしろかった。

もともとの私の目的、外見のモデリングを詰めたり、脚の出し入れとドアの開閉、フラップやラダーの構造と動きなどを知りたいという要望には、ほぼ応えてもらえなかった、というオチになります。
そういうページはほとんど無かった。

DC-10とL-1011が開発着手に至る民間航空機・航空会社の前史から、しのぎを削った開発競争、そして進空後のセールスや後継機計画、それが唯一結実したMD-11など、読み物としては大変おもしろかったです。
なぜ長距離型といったバリエーション違いが生まれたか(あるいは断念したか)、また搭載エンジンごとの差異など、興味深いページもあります。
民間機のムックということで、カラーページではとにかく片側側面1枚だけでもこの3機種がまとったありとあらゆる航空会社のペイント写真を網羅しようという意欲作ではあって、半年も塗られてなかった塗装まで写真見つけてきて掲載するなど、その執念には驚きます。
特定の会社の特定の年式のDC-10やMD-11、L-1011のスキンテクスチャを描きたいといったことがあれば、役立ちそうに思います。
また、この3機種を旅客機として運航していた日本のJAL・JAS・ANAとその子会社などの塗装はさらに大判写真を使い差異に触れながらページが割かれていますので、リアルタイムで見て乗ってた方にとってはなかなか懐かしさを感じさせてくれるムックかとも思います。
しかし裏返せば、会社ごとの塗装違いなどには興味がない、という方には意味のあるページ数が3割減かも。ぶっちゃけ私もなのですが。

また、完全に時期がかぶって開発に着手・進展し、どちらがよりたくさん航空会社に買ってもらえるか競争していたDC-10とL-1011だけに、1冊にまとまって両方の内容が書かれていて、共通する要素はこう、違いが際立つ要素はここ、と読み比べられるような構成になっているのは、良かったなと思う点ではあります。
しかし、それだけ1機種あたりのページ数や内容は減るわけで、割合としては前述のように4:2:4程度なわけですから、182ページまるまるDC-10のこと書いてあるムックが仮にあるならば、その4割程度の内容しかなくはなくってことで。そこも物足りなさを生んでいます。
他に日本語ムックないからしかたないんですけどねー、これより深く知りたいとなったらそれぞれの機体を個別に扱った英語の本買うしか。

まあ、まあ、そんな感じで。
編集方針として、どういう読者を想定して構成するかっていうのは明確で、目標はきちんと実現できてるんじゃないかと思いますけど。
そっから外れてた私は、もうそれはしかたないよね、と。

ああ、そうだ!
こういうムックとか本とかちゃんと読んでなかった、さらっと全体おさえる程度だった時期でも。このDC-10とL-1011、それにより大型のB747と3機種の中で、L-1011は標準でギャレー(機内食調理準備室)を階下の貨物室のスペースに配置して小型エレベータで上げ下げしてたってのは知ってたんです。有名だから。そのおかげで客室スペースは広がるし、肉を焼いたりして出るにおいなどが客室にもれでることもなくて都合が良かったってことは図鑑かなにかで読んでました。
なのでL-1011だけの特徴かしらって思い込んでたわけですが。このムックによると、DC-10でも航空会社からの要望で階下ギャレーを選択可能でユナイテッド航空などで採用されてたようで。専売特許ってわけじゃあなかったのね、と。
L-1011のほうは標準だから食材の積み込みドアなどが階下フロアレベルに用意されていたが、DC-10はオプションなので旅客フロアで積み込んでエレベータで下ろす必要があったという違いはあるようで。
そんなわけで、相応に知識欲が満たされるムックではありました。

Walk Around 2, A-6 Intruder読みました

squadron/signal publicationsの「Walk Around 2, A-6 Intruder」の古書を入手でき、読んだので簡単に。
WalkAround2_A-6_cover.jpg

まずこの本、出たのが1994年と古く増刷もかかってないのか? アメリカなど海外のAmazonマーケットプレイスや日本国内のネット古書店でも大変品薄で、手が出ないプレミア価格がついてることがほとんどです。
RanwersさんのA-6 イントルーダーのMOD作成をお手伝いするにあたり、世界の傑作機などを読んでも外見の造形が分からないところ多数なので参考資料としてすごく欲しくて。とはいえ、そんな法外な金額は出せないので、もう3/4ほど入手を諦めてましたが。
今回、ふと検索かけなおしてみたら普通にアリな、新品定価にちょっと足した程度の値段でポロっと出てるの発見したので即注文。届いて読んだという次第。

む、これかつて、プラモデル等製造販売のハセガワが資料洋書として輸入販売していた版か…… ハセガワのシールが貼ってある……

私は書評エントリ書き下ろしてるように、世界の傑作機A-6、WARBIRDTECHのA-6、このWalk AroundのEA-6Bを買って読んだ上で足りない情報は英語含めネットをあさり、またA-6Eの公式フライトマニュアルも入手してコックピット挙動なども学んでます。
その上でのこれなので、わりと基礎知識があってで、重箱隅ほじくりかえしのツッコミも入ってしまいますが。

参考 Walk Around EA-6B書評 - http://il2itaki.blog135.fc2.com/blog-entry-2769.html

全体として、まさにこれが欲しかった本!ではあります。
精密なプラモデルや3Dモデルを作るなら、ぜひおさえておきたい本です。
入手困難な本をそんなに薦められても困るでしょうけど。
必死にネットを探した写真や説明がポンとあったりします。
ネットで探しても見つからなかった写真も載ってました。脚の根っこのとことか。
ページ数はこのシリーズ標準の80ページ。

エンジンスタートのための圧縮空気の供給口や電源外部供給を受ける口などのアクセスパネルを開けた状態の接近写真とか。主翼下や胴体中央下のハードポイント・パイロンの接近写真なども豊富です。
EA-6B以外の機体の後方スライド開閉するキャノピーの、そのスライド動力部のピストン・シリンダーなどが伺える写真も掲載されていました。私は今回そこは再現しませんけど。
コストの関係かモノクロ写真ページも多いのですが、そういったページでもキャプションで実物の色指定が「ここ緑、ここ黄色、ここ赤」みたいに書かれています。

最大の欠点は、発行が1994年で、最終改修型のA-6E SWIPでコンポジット・ウイングも装備した機体が就役しつつあるときのもので、結構そのSWIPでコンポジット・ウイングな機体の写真も収録されているのですが。この本の中ではあくまでもA-6E TRAMの(生産中止になったA-6F代替としての)改良版という書き方がされているだけで、SWIPという明記がされていません。その改良版って注記もときおり抜けてます。
コンポジット・ウイングはコンポジット・ウイングと説明あるのですけど。
なので、その写真はTRAMなのかSWIPなのか、自分で見分けて、今自分が手がけているのはTRAMなのかSWIPなのかと合わせてその写真を採用していいのかいけないのか、自分で判断できないといけません。
A-6AやKA-6Dも主ではないもののちょいちょい写真の掲載があり、「A~Eに共通」「Aだけの特徴」「Eだけの特徴」みたいにできるだけ注記はされてますが、たまに間違ってそうなものや掲載スペース不足で書ききれてない写真もあります。E TRAM/E SWIP以外を作りたいときなどに注意が必要です。
稀に、比較としてEA-6BやEA-6Aの写真も掲載されているページもあり、おおむねキャプションついてますが、「EA-6型」という書き方しかされてなくて、大変重要なそのEA-6のAなのかBなのか自分で判断が必要なものもあったような。
まったく注記無く、あたかもA-6E TRAMの説明のための写真っぽい書き方でEA-6Bの写真が使われているとこも1箇所見つけました。
私はその写真のそれらの写真の見分けはついたので、脳内で補足しながらふんふんって読めましたが。


そういうわけで、このシリーズの他の機種の本同様、外観を造形するための写真集としては大変優秀なものです。
あとは、その写真が正しく自分が作りたいサブタイプに合致するかを見分ける知識と目を、他の資料で先に身につけておきましょう、ってとこになりますね。


私は部分的に、「ん?じゃあここ私がMOD作りでヨシと思ってた箇所も要修正なのか?」ってこの本を読んだ過程で発見したとこもあったので。
そうなのかどうなのか、追加資料さらに探すか買うかしたいなと思い始めちゃいました。

イカロスMOOK「AV-8B ハリアーII」書評

イカロス出版のJ-Wing編集部によるムック、「AV-8B ハリアーII」を読みました。
イカロスムック_AV-8BハリアーII_sample

F/A-18C/DとAV-8B+がセットになった米海兵隊ジェット機パックをいじるにあたって、正しい性能や兵装を知らねばと思い、買ったものです。
読むのに時間かかって、こないだMODの早期ベータ版を出した時点では、必要な箇所のみをつまみ読みしたのみでした。
MODの早期ベータを出して、ほかのこともこちょこちょして、それからちょっとずつ読み進めて全部読み終わりました。

わりと、そのほかのアメリカ軍機を扱ったイカロスMOOKと同じような構成、内容、バランス、クオリティかなと思いました。
AV-8Bのタイトルですけど、アメリカ海兵隊機のこの名前の機体だけではなく、前身であるイギリスのハリアー・シーハリアー・それを海兵隊が導入したAV-8Aからの流れもしっかり扱われており。
AV-8Bが誕生するより以前の機体で戦ったフォークランド紛争についても、1機1機の戦果が扱われているなど、決して軽視はされていません。
全体ざーーとさらってて、個別の技術的なところは浅いっていうのもいつもどおりかなとは思いますが。1冊目の入門書にはむしろそのほうがふさわしいと、常々言ってきたところなので、それがこのムックの欠点とは思いません。

ただ、これもいつもどおりではあるのでしょうか。専門の軍事ライターに執筆を依頼しているページについてはしっかり書かれているのですけど。
編集部文責で書かれた兵装紹介ページには、最近私がかなり独自に勉強してることもあるのでしょうけど、けっこうデタラメが目立つなあ、という気がしました。入門書にいいはずだけど、ここに書かれてることを初心者がうのみにしたら危ないかなあというところも。
お金かかるけど、編集部で勝手に書くのやめて、全ページライターに依頼した方がいいのでは……

まあ、総じていい本だとは思いますよ。
これを読んでて「あっ、そうだったのか」ってなって、MOD改良に活かした点も多いです。
また、活かしたいと思ってTODOには入れたけど、時間無くて早期ベータではオミットした点もありますが。


イギリスのハリアー・シーハリアーを専門に扱った方の世界の傑作機も合わせて買ってあるので(こっちはまだまったく手つかずですけど)。
また時間あるときに読みます。

メカニックブックス7「F-14 トムキャット」アーサー・リード著の書評

F-14のMODを手がけるにおいて、イカロスMOOKのF-14購入、F-14Dの英語公式フライトマニュアルのPDF入手(有料会員制サイトでダウンロードしたんだったかな?)と資料集めしましたが。

もうちょっと別のことも多面的に読みたいなと思ったので、かなり古い本ですが、原書房のメカニックブックス7「F-14 トムキャット 米海軍が誇る最強の戦闘機」アーサー・リード著・浜田一穂訳、も古書で購入して読みました。
メカニックブックス7_F-14トムキャット_sample

浜田一穂は、原書房の同じシリーズで、ビル・ガンストン著のF-18本とF-16本も訳してて、それぞれなかなか分かりやすさと詳しさが並立してるいい本だったと思ったので。この本もF-14のMOD作りに役立ちそうと期待を持っての購入でした。
ただ、これを読んで分かったのは、F-18本とF-16本が良かったのは、原著者のビル・ガンストンの力量によるところがかなり大きかったのだな、というところ。いやまあその2冊は訳も自然で読みやすく、それでいて誤りのない日本語ではあったので、訳の部分も満足なのですけど。
F-14本の原著者のアーサー・リードは、んーっと「読み物」としては不足はないんですが、MOD作るレベルで技術的側面の掘り下げをビル・ガンストン並に要求してると、まったく届いてないなあ感が強かったです。
また、この本に限っては、主兵装である空対空ミサイルAIM-54 Phoenixの日本語読みを、今ではだいたいフェニックスとカタカナで書くことが多いと思うのですが。浜田一穂はフィーニックスと記述しているので、ちょーびっと読んでてひっかからなくもない、かな? あとは原書に書かれてないことで、日本がF-X選定時にF-15にするかF-14にするか競合でみたいな話を付け足す章があったり。また原書は1978年というかなり古くに書かれたもので、量産サブタイプが存在しないF-14Aのみだった時点のもの。訳書は1985年と時差があり、その間にF-14Dの開発が開始されているなど(採用はもっと遅く1990年だった)変化があったので、そこを訳者が独自に追加した章もあったりするが、そこの文が持ってるテイストの違いとか、追加部分も正確性などに若干疑問がとか、文句はないでもない……かな。

買う前に持ってた期待に比してどうだったかという話になると、その期待のベースになってたビル・ガンストン本との比較にどうしてもなってしまうのですが。
ビル・ガンストンのF-18やF-16は、それぞれの機体のフライトコンピュータが操るフライ・バイ・ワイヤ(FBW)によって、フラップや各動翼がどのように自動制御されるかというのを具体的な場合分けと数字を伴って説明されていて、「すっげー、これ可能ならそのままMOD動作に取り込みたい」って感動すらおぼえたものでしたけど。
アーサー・リードのF-14本では、そういった動翼制御に関する具体的数字がまったくと言っていいほど出てきません。
AWG-9レーダーの探知距離といった性能部分の数字はバンバン出てくるので、そこは評価できるんですけど。
可変翼の角度が、最も前に出てる後退角20度から、飛行中で最も後ろに下がってる後退角68度まで、どういう飛行条件で判定されて角度が決められるのかといった「これ読みたい」といったことは書かれてない。「コンピュータが自動的に最適な角度にする、パイロットは最初は自分で後退角をいじろうとするが、すぐにコンピュータに任せたほうが賢いことに気づく」といったざーっくりした話でしかない。あちゃー。部分的にはイカロスMOOKのほうが詳しいぞ、ってなことも多い。
フライトマニュアルは入手しても読み下すの大変なので、最後にしたかったんですけどねぇ…… まだ読んでないからそっちとの対照はできてないし。

あとまあ、やっぱ1978年当時の本なので。
2017年の後知恵をもってすると「あの当時は隠されてた事実が、今はこう明かされてて」みたいなことが、その隠されてる時点の情報で書かれているわけなので、「それは実は違うんだよ」ってなことが堂々と書かれていたりするから、そこはもう仕方ないと割り切って、別からも情報入れましょうねと。
たとえば「F-111を空軍海軍で同じベース機体を使えるようにするなんての、最初から失敗するの分かってたダメな子」扱いされてますし。今では、まあたしかに最適機体とは言いがたく専用機体のF-14のが良かったは良かったに決まってるけど、とはいえ海軍が拒否る前提でゴネまくってダメの烙印押したんだよなーって分かってますよね。
それはそれで、そうと分かって読むならおもしろいかもしれない。
あと、これは原著者の見解ではなくて、米海軍飛行隊長中佐がF-14に実際に乗って「こんないい戦闘機なんだぜ」って語ってる章で、その中佐の意見なんだと思いますけど。「F-14は可変翼だからすごく小回りがきく。さすがに空中で止まれるハリアーには負けるけどな!(HAHAHA」って部分も目を引きました。これも1980年ぐらいまでは英米日どこでも言われてたことで、たしか江畑謙介も騙されてたと思うので、仕方ないんですけど。もっとずっと後になって、ハリアーで戦闘機動してるときにノズルを下向きに回すのは、運動・位置エネルギーを失うデメリットが大きすぎてやらないほうがいい、ってことになったはずです。

なんかマイナス点ばかり書いてしまいましたが。
F-14という機体の開発史と、それ以前のF-4といった機体と比較してすばらしく良くなった点のざっくりした話については、かなり気持ちよく書かれてます。
グラマンがどれだけF-14の量産体制に工夫をこらしたかとか、また開発チームがどれだけ頑張ったかとか、「プロジェクトX」的な感動エピソードとして楽しめる面は多かったです。今の私はそこにあんまり興味を持たなかったわけですけど。
AWG-9レーダーと火器管制システムが、さまざまな追尾モードを持っていてどのように空対空ミサイルで敵機撃墜できるかといった面は、数字も伴いなかなかにその優秀さを掴みやすいように書かれています。残念なことに、その部分はIL-2 1946向けのMODを作る上では再現がかなり困難なところで、せっかく書いていただいても採用することができなかったりします。

あー、あと「ん?これは違うくない??」って思ったのは、主脚についての記述かな。
P47から「単純で頑丈な脚」って節がありますけども。
MODで関節の動きなどをプログラミングしてると、F-14の脚が単純だなんてまったく思えない。
後発のF/A-18はかなり複雑な、途中で折れる主脚なので、それと比べたら単純かもしれませんけど、この本の時点ではF/A-18なんて影も形もないわけで。
比較対象を、同じ海軍艦上ジェット戦闘機の先輩格であるF-4やF-8にとるとですね。
F-4は主翼中ほどに脚の根が取り付けられていて、そこに回転軸があって、1軸回転だけでタイヤを内側の機体側に引き上げますよね。WWIIで言えば(細かな引き上げのアクチュエータの取付や関節などの違いは無視すると)零戦やFw 190なんかと共通の単純構造。
F-8は胴体から斜め三角形に支柱が外向きに出てる先にタイヤがついてて、支柱根っこがやはり1軸回転だけで全体を前方胴体内側に引き上げるのみです。超単純。
で、F-14ですけど、まず前方に真っ直ぐ引き上げられるんですけど、そこから内側の胴体も外側のパイロンもよけながら軸中心にするりと90度タイヤがひねられて、主翼の根本のところにスポッとはまるんですね。A-6とほぼ同じなんですけども。F-4やF-8に比べると軸が多くて複雑。MODで再現しようとして知ってる部分だと、いや違うよ、単純じゃないよ、ってなっちゃった。

やっぱり文句ばっかりになってしまいましたが。
日本語で読めるF-14の本ってあんまり多くないと思うので。
古くてクセのある本だということを把握して読むぶんにはいいんじゃないかと思います。
プロフィール

western0221

Author:western0221
2010年7月30日にIL-2 1946を始めました。
好きなアニメは「ダーリン・イン・ザ・フランキス」「刀使ノ巫女」「多田くんは恋をしない」「グランクレスト戦記」「ひそねとまそたん」「フルメタル・パニック! IV」「Lostrage conflated WIXOSS」「SAO ガンゲイル・オンライン」「BEATLESS」「ゲゲゲの鬼太郎」「CCさくら CC編」「ブラッククローバー」「ラストピリオド」「ニル・アドミラルの天秤」。

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